雪人
「なあ、段々近づいてきてねえか、あの黒い点」
クーパの言うとおり、黒い点は徐々にだがその大きさが増していく。それに地鳴りのような音まで聞こえてきた。
「そろそろだね〜巨大な隕石が落ちてくるの〜。じゃあ準備しよっと〜」
そうお気楽に言ってシュレリアは腕を天に向かって突き出した。 シュレリアが何をするのかクーパは黙って眺めている。
「ウインドドール」
あどけない声で腕をぐるぐる廻して魔法名を唱えると、腕の回転から生まれた風が人型の人形を三十体形成した。どれも透けている緑色の体をしている。
造形も何もない風で出来た人型人形はシュレリアの傍まで集う。「じゃあ隕石の落下速度緩めて来てね〜」
シュレリアが軽快な口調で命令すると、風人形が円形の陣で黒い点に向かい飛翔していった。
「あんな風人形が隕石に対抗できんのかよ?」
クーパが疑り深い目付きでシュレリアを見た。口ではそう言っているが対抗なんかできないだろと思っている。
「少なくともクーパよりは役にたつよ〜」
「てめえやんのかこら!」
眉をひくつかせ、クーパが怒鳴った。
シュレリアはクーパのそんな態度を楽しんで見ている。それは久々に怒るクーパを見て喜んでいる風でもあった。
「なんだその満面の笑みは?」
「なんでもないよ〜。それよりも夜空見たほうがいいよ〜」
シュレリアに言われてクーパは夜空を見るなり、驚愕した。夜空のある一点を指差して目を開き口をパクパクさせている。
「なんだよ……あれは……」
信じられないというニュアンスが混ざった口調でクーパは呆けたように言った。
「あれが隕石なんでしょ〜」
楽天的な言い草でシュレリアがクーパに答えた。
二人の視線の先には肉眼でもはっきり分かるほどの巨大な隕石が目に映っていた。王都グライドアースをすっぽり覆い尽くすことのできる巨大な隕石が、空気摩擦を起こし表面が火を吹いている。
それを三十体の風人形が一丸となって両手を突き出し踏張り、落下速度を落とすため隕石と拮抗している。いや、明らかに風人形が一方的に押されている。大気圏の遥か彼方から降ってきた隕石は想像を絶する速度に達し、もはや止めることは不可能だ。破壊するしか方法がない。
シュレリアとクーパの地点に到達するまで、あと――
――八秒。
クーパの言うとおり、黒い点は徐々にだがその大きさが増していく。それに地鳴りのような音まで聞こえてきた。
「そろそろだね〜巨大な隕石が落ちてくるの〜。じゃあ準備しよっと〜」
そうお気楽に言ってシュレリアは腕を天に向かって突き出した。 シュレリアが何をするのかクーパは黙って眺めている。
「ウインドドール」
あどけない声で腕をぐるぐる廻して魔法名を唱えると、腕の回転から生まれた風が人型の人形を三十体形成した。どれも透けている緑色の体をしている。
造形も何もない風で出来た人型人形はシュレリアの傍まで集う。「じゃあ隕石の落下速度緩めて来てね〜」
シュレリアが軽快な口調で命令すると、風人形が円形の陣で黒い点に向かい飛翔していった。
「あんな風人形が隕石に対抗できんのかよ?」
クーパが疑り深い目付きでシュレリアを見た。口ではそう言っているが対抗なんかできないだろと思っている。
「少なくともクーパよりは役にたつよ〜」
「てめえやんのかこら!」
眉をひくつかせ、クーパが怒鳴った。
シュレリアはクーパのそんな態度を楽しんで見ている。それは久々に怒るクーパを見て喜んでいる風でもあった。
「なんだその満面の笑みは?」
「なんでもないよ〜。それよりも夜空見たほうがいいよ〜」
シュレリアに言われてクーパは夜空を見るなり、驚愕した。夜空のある一点を指差して目を開き口をパクパクさせている。
「なんだよ……あれは……」
信じられないというニュアンスが混ざった口調でクーパは呆けたように言った。
「あれが隕石なんでしょ〜」
楽天的な言い草でシュレリアがクーパに答えた。
二人の視線の先には肉眼でもはっきり分かるほどの巨大な隕石が目に映っていた。王都グライドアースをすっぽり覆い尽くすことのできる巨大な隕石が、空気摩擦を起こし表面が火を吹いている。
それを三十体の風人形が一丸となって両手を突き出し踏張り、落下速度を落とすため隕石と拮抗している。いや、明らかに風人形が一方的に押されている。大気圏の遥か彼方から降ってきた隕石は想像を絶する速度に達し、もはや止めることは不可能だ。破壊するしか方法がない。
シュレリアとクーパの地点に到達するまで、あと――
――八秒。