雪人
 全てを終えたシュレリアとクーパが、ルイのいるグライドアース城の場所に上空から降り立った。そして二人はルイの許まで歩いていく。クーパは足取り重く、シュレリアは軽快な足取りで。
「ルイ終わったよ〜」とシュレリア。
「うげえ、疲れたー」とクーパ。 対照的な二人の第一声にルイは気苦労の言葉をかけた。
「ご苦労さん」
 シュレリアとクーパがルイの隣に並んだ。
 ルイは紳士風の茶色い短髪の男性――ソクラサを見下ろしながら高圧的に訊ねた。
「どういう目的があって一国を支配しようとしたんだ?」
 ルイの言葉の語気が僅かに強くなってしまった。逸る思いが抑えきれないという気持ちで早口になっている。
「目的も何も聞かされていないですよ、私のようなしたっぱにはね」
 地面に腰を落としているソクラサが自嘲気味に笑った。言葉使いも丁寧な喋り方に戻っている。どうやら、自分を取り戻したらしい。
 ルイは更に詰問した。
「本部が何処にあるのか本当に知らないのか?」
「知らないですよ、本当にね。私達に指令を出すのがバーバリティーナイトですから、彼らに聞けば分かりますよ、本部居場所がね」「これが最後の質問だ」
 ルイは言葉を切った。グライドアースから波のように引いていた風が帰ってきて、ルイ達に心地よいそよ風を運ぶ。
「お前がレッドクロスに属した理由はなんだ?」
 ルイの翡翠色の瞳に氷のように冷たく、鋭さが浮かび上がる。何か特別な感情を秘めた瞳のようにも見えた。
 天を仰ぐようにしてソクラサがポツリポツリと言葉を零していく。
「私が世界中を旅をしているとき彼らが接触してきましてね、組織内容、思想、世界の在り方について共感してレッドクロスに属しました。私が旅をしていた時に比べ今は確かに世界は平和です。でも、それは仮初めの平和を維持しているだけです。貴方ならご存知のはずだと思います。それを貴方たちジハードが作り上げたのですから。しかし、結局の所偽りの平和です。いつまで保つのかわかりません。だから、絶対的な力で世界を治める必要があるのです」
 ソクラサは顔を俯かせた。
 ルイはソクラサの近くまでいき、首筋に手刀を下ろした。
 ソクラサがゆっくりと地面に横たわる。
「だからって……こんなことしていい理由にはならない」
 哀愁を秘めた声は風に乗り夜空へと消えていった。
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