雪人
四階の謁見の間にルイがレミィ=ミュウル=シィーダリスをお姫様抱っこした態勢で辿り着いた。傍らにはクーパがスコップを背負い、辺りを見回している。
謁見の間はシャンデリアが二つ天から伸び、その空間を煌びやかに照らしていた。玉座が二つ並び、赤い絨毯が敷き詰められている。
その場所はソクラサと戦闘する前に、ベルライズ=トリテラスと戦った場所であった。
玉座の片方に座り両手で頭を抱えていたベルライズが、複数の足音に気付き、その方へ視線を向けるなり唖然とした。目をしばたたかせ、凝らすように視線の先にいる人物を見つめる。
「ルイ殿……ひ、姫様っ!」
二人の姿を認めたベルライズが慌てて玉座から立ち上がり、足早に二人の許まで歩いて行く。所々に小さい傷跡がある白い鎧が擦れて音を鳴らしながら、白銀の髪色をした青年の前に立った。
「ルイ殿、姫様を何処へ御連れになられるのですか?」
先の戦闘でルイと相対した時とは違い、丁寧な物言いでベルライズは訊いた。元来彼は王宮に遣える騎士であるから、このような言葉遣いなのだろう。それに、ベルライズにとってルイは信用のおける人物になっていた。
「レミィ王女に縁のある場所にお連れするだけだ」
「縁のある場所……?」
「ああ。もしかしたらそこに行けば、心を取り戻すことができるかもしれない。まあ、あくまでも可能性の話しな」
ルイもそのことについて確信がある訳ではない。自ら心を閉ざした人間をもう一度こっちにこさせるのは、苦しい思い、辛い思い、悲しい思い、それら全てが心を取り戻す時に彼女の小さな身体にのしかかる。それを拒絶すれば彼女は心をまた閉ざし、受け入れれば心を取り戻す。どちらにしてもルイやベルライズが彼女にしてあげれることは何もなかった。
その意味がわかったのか、ベルライズが肩を震わし顔を俯かせた。
「私には何一つ姫様にしてあげれることはないのか……」
今まで黙って成り行きを眺めていたクーパが口を挟んだ。
「おい、おっさん。あんたが嘆いた所で何一つ姫さんの状況は変わりゃしないぜ。だったらな、騎士らしく嘆く前に姫さんが助かった時、その時に二度と無いように守ってやんな」
「クーパの言う通りだ」と言ってルイがクーパを連れて謁見の間から出ていく。遅れてベルライズも吹っ切れた表情で後を追った。
謁見の間はシャンデリアが二つ天から伸び、その空間を煌びやかに照らしていた。玉座が二つ並び、赤い絨毯が敷き詰められている。
その場所はソクラサと戦闘する前に、ベルライズ=トリテラスと戦った場所であった。
玉座の片方に座り両手で頭を抱えていたベルライズが、複数の足音に気付き、その方へ視線を向けるなり唖然とした。目をしばたたかせ、凝らすように視線の先にいる人物を見つめる。
「ルイ殿……ひ、姫様っ!」
二人の姿を認めたベルライズが慌てて玉座から立ち上がり、足早に二人の許まで歩いて行く。所々に小さい傷跡がある白い鎧が擦れて音を鳴らしながら、白銀の髪色をした青年の前に立った。
「ルイ殿、姫様を何処へ御連れになられるのですか?」
先の戦闘でルイと相対した時とは違い、丁寧な物言いでベルライズは訊いた。元来彼は王宮に遣える騎士であるから、このような言葉遣いなのだろう。それに、ベルライズにとってルイは信用のおける人物になっていた。
「レミィ王女に縁のある場所にお連れするだけだ」
「縁のある場所……?」
「ああ。もしかしたらそこに行けば、心を取り戻すことができるかもしれない。まあ、あくまでも可能性の話しな」
ルイもそのことについて確信がある訳ではない。自ら心を閉ざした人間をもう一度こっちにこさせるのは、苦しい思い、辛い思い、悲しい思い、それら全てが心を取り戻す時に彼女の小さな身体にのしかかる。それを拒絶すれば彼女は心をまた閉ざし、受け入れれば心を取り戻す。どちらにしてもルイやベルライズが彼女にしてあげれることは何もなかった。
その意味がわかったのか、ベルライズが肩を震わし顔を俯かせた。
「私には何一つ姫様にしてあげれることはないのか……」
今まで黙って成り行きを眺めていたクーパが口を挟んだ。
「おい、おっさん。あんたが嘆いた所で何一つ姫さんの状況は変わりゃしないぜ。だったらな、騎士らしく嘆く前に姫さんが助かった時、その時に二度と無いように守ってやんな」
「クーパの言う通りだ」と言ってルイがクーパを連れて謁見の間から出ていく。遅れてベルライズも吹っ切れた表情で後を追った。