雪人

 すっかり外は暗くなり空は全てを包みそうな闇の色へと代わる。暗くなった通りには街灯が灯り、うっすらと地面を弱々しく照らす。辺りは来たときと同じように静寂が包み、殆どの家が明かりを消しているようだ。
 暗くなった通りを歩きながらルイは考えていた。
(ふぅー…自分らしくなかったな。どうやら俺はまだ引きずってるらしい……あの時に決別したはずなのに……やっぱり駄目だったのかあの声が……聞くだけで何とも言えない嫌悪感が溢れだす……)

 ため息を付き、闇に照らされたルイは自嘲気味に笑った。
 それにしても思いがけない人物とよく会う日だなあと思い、南にある酒場へと続く道を歩いていく。が、不意に背後に気配がして立ち止まる。どうやらエレミールやメリルとは違う奴が自分の後ろに人がいるようだ。
 ゆっくりと振り返り、暗くなった景色でも存在感のする茶髪の人物がこちらを見ていて佇んでいた。顔は暗くて性別がわからないが、ルイの位置からでも胸の膨らみが豊かなことがわかり女性だとわかる。腰には50位の剣を持ち、鞘には蠍のような形をしたデザイン。
 女性は口を開き、出で立ちとは違い殺気を含んでいるが可愛らしい声で言う。

「ジハードの疾風の銀狼だとお見受けする」

「そうだが、女性の君が何かようかな?女性に恨まれるようなことをした覚えはないと思うけど」

「お前に恨みはない。だが、ある命をうけてきたとだけ言っておこう。それに、殺される相手ぐらいの名を名乗っておこう。フルーレ・ミュバルトス。お命頂戴する」

 鞘から剣を抜き、長い茶色い髪を揺らしながら女性とは思えない速さで駆け出す。ぼんやり見ていたルイは胸中でため息を吐き、女性にしては速いがルイにとっては止まって見えるも同然な動きなので横に斬り付けたのをバックステップで躱す。斬り付けた剣を切り返してさらに横に一閃する。読んでいたルイは跳躍して躱し、ゆっくりと女性の背後に下りる。
 女性は背後にいる敵に舌打ちすると、青年から離れるためいったん後ろに跳んで距離を置き、苛立ち気に何もしてこない青年を見据えて怒気を含んだ声で言う。

「なぜ何もしてこない!さっきから両手をズボンのポケットに入れたままで戦う気があるのか!?」
 そう、ルイはズボンのポケットに手を入れたまま躱していたのだ。
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