雪人
 ルイは怪訝な表情で訳が分からないといった感じで言う。

「はっきり言ってない。戦う理由がないし、君は賞金首でもなければリベンジャーでもないだろう?だったら意味のない戦いで命を無駄にするなよ」

 踵を返して月明かり照らされて白銀色の髪が黄金色へと変わった綺麗な髪を靡かせた青年に女性は神秘的な姿に思わず見惚れた。はっと我に返り、歩きだして今にもどこかに行きそうな青年に思わず素の声で聞く。

「どうして何も聞かないの?私が誰に差し向けられたのか、私が誰なのか?」

 立ち止まった青年は振り返り興味なさげに答える。

「そんなことはどうでもいい。話す気があれば話せばいいし、その反対もまた然りってこと」

 それじゃあと言って、ルイは歩きだす。
 女性は標的を仕留め損なったことを気にするわけでもなく、闇に消える青年を哀しい目を宿して見ているしかなった。
 青年が去った後に悲しそうに弱々しく呟く。

「私はこ………としたくて……ない」

 小さく呟いた言葉微かに聞こえる程度だ。街灯に照らされた女性の顔は悲痛な表情で壊れてしまいそうなほどだ。そして闇へと消えていった。

 ギィイとドアが擦れる音が生じる。ドアを開けて入ってきた人物に目をぱちくりさせ、茫然とした表情で女性従業員のミリアもといマスターの愛娘がテーブルを拭いていた布巾を落としてしまう。カウンターの奥にグラスを拭いていたマスターも驚きを隠せないようだ。そして何か確信めいた表情に変わり、入ってきた人物に呼び掛ける。

「ルイ君、ビルト・ルゲイエは退治できたんだね?」

「はい。もうこれでルゲイエに悩まされることはないと思うよ」

 ルイは先程の冷静じゃなかった自分と違い、今は温厚な態度でマスターに答えて、カウンターの近くにある備え付けられた椅子に歩み寄って腰掛ける。するとすぐにマスターが入れたばかりの湯気が立ち上るコーヒーをルイの前に出す。
 ありがとうと言い、ルイは熱々のコーヒーを持ち一口含む。舌が火傷しそうかと思っていたけど、ちょうどいい熱さに飲みやすく、喉に程よい苦みがさらにコーヒーのうまさだなと思うルイ。
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