雪人

 次の日の朝、宿屋の一室へと窓から流れる風が備え付けられている白いカーテンをユラユラと揺らす。空は薄明るくもうすぐ朝をつげるだろう。部屋のドアからトントンと遠慮がちにノックする音がなる。その音に部屋のベットで寝ている人物はうーんとうなりながら寝返りを打つ。またノックする音が部屋に響き、徐々に大きさや音が増し、仕舞にはドアに鍵が掛かっているというのに蹴破って入ってきた。入ってきた人物は苛立ちを抑えようとはせず、ズカズカと部屋で眠っている人物に歩み寄っていく。
 眠っている人物を見下ろす形で立っている水色の髪をした人物――エレミール――はまた寝返りを打ってこっち側に顔を向けている銀色の髪をした人物――ルイ――に顔を近付けるために腰を下ろす。1メートルもない距離で寝ている顔を見て唾を飲み込む。銀のサラサラの髪がベットに落ち、顔を少し覆っているのをエレミールはどける。露になった形や品のいい唇に思わず魅せられ凝視し、顔をほのかに赤くして惚けたように自分の唇をルイの唇へと瞳を閉じてゆっくりと近付ける。後もう少しの所で、二人の唇が重なるかと思いきや、声が掛かりエレミールは顔を近付けるを止めた。二人の距離は唇が触れ合う寸前の所であった。

「そんなにキスがしたいなら、好きな人としたらどうだ」

 エレミールは閉じていた瞳をパチッといきよいよく開けた。お互いの息がかかる距離でルイの瞳と合い、みるみるうちにエレミールの顔が林檎のように真っ赤になる。そして素早く壁ぎわまで後退る。

「あぅぅ。お、お、起きてたなら早くいいなさいよ!」

 ベットに寝転がっていた体を起こし、あぐらをかいてこっちを見てくるルイに指を差して恥ずかしそうにもう片方の手で顔を覆いながら声を上げる。

「起きるもなにも今さっき起きたばかり。危うくキスされるところだったけどな」

 ルイの溜め息混じりに言う言葉にエレミールは余りの恥ずかしさにどこかに穴があったら入りたくなってきた。
 宿屋に備え付けられている服を着たルイは壁ぎわにいるエレミールに近寄る。
 エレミールの身長はルイの頭一個分ないぐらいで、自然と正面を向いていたら服の隙間から艶やかな白い肌の胸元が見え、心臓が跳ねる。突然腕を捕まれ、何事かと思い見上げる。
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