雪人
「アイスロック」

 巨大な岩のように堅く大きな氷が迫ってくる火球に向けて放たれる。二つの相反する属性は衝突し、ジュウーと焼き石に水を落としたような音が鳴る。衝突した場所には白い煙が立ち上り、前方視界が悪くなる。白い煙が微かに左右に揺れる。その刹那、白い煙の中から飛び出してきた赤狼は牙や爪をむき出しにして襲い掛かる。突然の奇襲に動揺することもなく、瞬時に氷剣を構える。キンッと金属同士が当たる独特の音が響く。そして小さな声でルイは紡いだ。

「二式“瞬神剣”」

 刹那、赤狼の牙や爪を氷剣で受けとめていたルイの姿が消える。突然拮抗していた力が消え、赤狼は前のめりの態勢になる。消えたルイを探そうとキョロキョロと血のように赤い瞳を彷徨わせ探すが見当たらない。ふと気配を後ろに感じたのか、振り返ろうとしたら体中の至る所から緑色の体液を吹き出しながらゆっくりと倒れる。ドンっと地面に倒れた振動がルイのもとに伝わる。

「終わったか…」

 その振動を受け取ったルイは溜め息混じりに呟き、倒れた赤狼を見るため振り返る。
 赤狼は緑色の血のような体液を流していて弱々しい様子だがお腹の辺りが上下しているためなんとか生命を保っているようだ。その様子を近くで見ているルイはすぐ傍まで近寄り、赤狼を見下ろす形で見る。複雑そうな表情で顎に手を添え眉を寄せ、じっと今にも死にそうな赤狼を黙って考えている仕草をして見ている。顎から手を離し定位置の場所に戻す。

「今、楽にしてやるからな」

 優しい口調で死にそうな赤狼に告げ、氷剣を心臓目がけて突き刺す。ピクッと一回痙攣し心臓の機能が停止した。
 何ともいえない表情でルイの一連の動作を後方で見ているエレミール。それに気付いたルイは後ろを振り返り、低い声音で話し掛ける。

「いつから見てたんだ?」

 エレミールは困惑したような表情でしどろもどろに言葉を発した。

「え、あ、その、倒れたあたりから……」

 歯切れの悪い口調でエレミールは答える。
 ふうーと一つ深呼吸をし、張り詰めていた表情を普段に戻してルイはエレミールに向けて歩きだす。

「あっあれ!」

 突然エレミールが驚いた声を上げ、ルイの後ろを指差した。
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