妖恋
「たかが一時の馴れ合いそんなものに僕は未練を抱きません。あなたに牙を剝いたとなれば尚更。僕は一瞬であいつを壊したくなった・・・・。」
妖は少女を抱える腕に力を込めた。目を細め、殺意に満ちた目で彼のいた日々を思い返した。
それも、一瞬で終わる。すぐにいつも通りの表情に戻す。

「・・・・早く宿に戻りましょうか。夜は冷え時です。・・・・・あ、でも雅嬢が風邪をひいて寝込めば僕は雅嬢を一日中つきっきりで看病できる・・・。
それは、それで・・・・」
あらぬことを考える妖に少女は鉄拳をくらわせた。
---ボカッ。
「よりによって、主人にわざと風邪をひかそうとするなんて!」
「うぅ・・痛いです。でも、これもあなたの愛なのだと考えるとどうってことないです!
いや、むしろ・・・・いい!快感です!もっと・・・・もっと、僕を殴ってください!」
「・・・・・・。・・・・・・ごめんなさい。あなたにそんな性癖があったなんて・・・
大丈夫よ。私は全力で受け入れるよう努力するから!」
「ああ!やはりあなたは心の広いお方です!こんなものに目覚めてしまった僕でさえ受け入れてくれるなんて!」
「下僕がどんな性癖を持っていようとそれを受け入れるのが主人の役目・・・・。
そうよ・・・!これは仕方がないことなのよ!」
「僕はあなたの下僕でいられて最高です!感激です!あなたの狗で良かった・・・・。
一生あなたの狗でありたい。あなたのものでありたい・・・」
「言われなくても、そのつもりよ?あなたは私の下僕で狗で、それから」
「それから?」
「一生私のもの」



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