【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
妊娠四ヶ月が過ぎた頃、
少しずつ膨らんできたように感じた
そのお腹に、覚悟を決めた。
次の逢瀬を最後にしよう。
そうやって決断した後は、
行動は早かった。
全ては、
この子を守りたいから。
ずっと暮らし続けて来た
祖母の家を売った。
少しでも生活費を作っておきたいから。
ずっとお世話になり続けた職場にも
退職願を出した。
あんなにも愛し続けた恭也の前から
離れることを、自分から進めているのに
不思議に恐怖感はなかった。
多分……お腹のこの子が、
力を貸してくれるから。
そして最後の夜。
私は……
ホテルで恭也と
再び体を重ねた。
恭也が触れる全てを
噛みしめるように、
体の中に刻み込みたいと思った。
もう二度と、
触れることがない恭也の体に
自らも印を刻み込むように
抱きしめた。
何度も何度も
恭也の甘い声を欲し続ける。
絡み合う二人の
甘美な間。
*
ごめんね……。
ママ、
これで最後にするから。
アナタも
パパの温もりを感じていて
*