【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】




そこで出された診断は、
川崎病。

急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群。


年間に7000人から8000人の子供が発症する
病気なのだと知った。


そのまま真人は入院となって、
血液製剤を投与。
炎症を抑える治療が始まった。



真人が眠る病室を離れて、
一人、待合室のソファーで
携帯を触って、川崎病についての情報を調べる。




調べたい情報を簡単に
調べることが出来る今が
嬉しいのと同時に、
とても残酷なことに思えた。


川崎病は、血管の病気なのだと言うこと。
そして場合によっては、
合併症や後遺症が起きるかも知れない。


その説明の最後に綴られた、
川崎病の死亡率。




そんな言葉に……
最愛の我が子を失うかもしれない恐怖が襲い掛かって
縋るように、病室へと駆け戻った。




高熱が下がった直後から、
指先からめくれてしまった皮。


そんな包帯の巻かれた
自分の腕を見つめながら、
『ママ、ピアノがひけないね』っと小さく呟く
我が子を抱きしめた。



その日から、ずっと
病院と職場を往復する日々が始まる。


腕に刺さった点滴の針が邪魔で
嫌がる真人をなだめながら
治療を受けさせて、
甘える我が子を抱きしめる。


仕事で離れ離れになる時間は、
大泣きする我が子に
胸が締め付けられそうになりながら
出掛けた。



心配していた
冠動脈瘤もやがて消えて
真人は退院を許された。

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