【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】





スーツケースを、近くのコンビニから
恭也君の病院へと宅急便に預けると
また真人がいる病院へと足を向けた。


真人が見える向かい側のソファーに
座りながら、俯いて目を閉じる。




それだけで疲れ果てた体を
睡魔が襲ってくる。






真人……。


本当のことを話すことは出来ないけど、
明日……、
ずっと会いたかったお父さんに
逢えるのよ。



お父さんとお父さんのお友達が、
貴方の病気を治してくれるから
その温もりを忘れずに、
刻み付けて……。



貴方に、お父さんをあげられない
お母さんを許してね。








翌朝、看護師さんの声で目が覚める。



ぐっすりとは眠れない仮眠に、
やっぱり残る疲労感。



「ご自宅でゆっくり休まれれば
 良かったのに。

 大丈夫ですか?」



そう言って気遣ってくれるその人は、
ポケットの中から、暖かい缶に入った
コーンスープを手渡してくれる。


「有難う」

「少しほっとすると思います。

 ずっと張りつめて、緊張してしまうと
 真人君が一番心配すると思いますから」



そう言うと、
看護師さんは真人の傍へと移動して
いろいろと様子を見てくれる。



お昼が近づくと、
主治医と看護師さんが
真人の部屋へと訪れて、
転院の準備を始めた。



「お母さん、ランデブーポイントの
 小学校のグラウンドまで送ります。

 今、真人君は薬で眠らせて
 コントロールしています。

 運ばれてきた際の一番の原因になっていた
 瘤は、薬で落ち着いていますが
 そこの血管に負担がかかっている現状は変わりません。

 真人君が安心して暮らせるように
 一緒に頑張ってきてください。

 多久馬の元から、こちらに戻ってきたら
 引き続き僕が担当させて頂きます」



そう言って担当医の先生が告げると
病室から真人は、ストレッチャーに乗せられたまま
運び出される。


その隣を私はお辞儀をしながら、
ついて歩いた。


ヘリとの合流ポイントまで真人を送り続けてくれるのは
救急車。

そこにストレッチャーが入って固定されると
主治医の先生が車内に乗り込んだ。



「お母さんもどうぞ」


言われるままに車内に乗り込んで椅子に座ると、
救急車はサイレンを鳴らしながら
その場所へと動き出した。


病院近くの小学校に真人を乗せた救急車が到着すると、
救急車の近くに集まってくる
真人のクラスの子供たち。




救急車から運び出された真人に駆け寄ろうとする生徒たちを
担任の先生が窘めた。


窘められた途端に、
生徒たちは整頓する。
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