【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
「あっ、先生~」
「こらっ、真人君。
走っちゃダメだぞ。
ほら、検査頑張った約束だからな」
そう言って真人の前に手渡されるのは
綺麗に包装された小さな箱。
「先生、おぼえてくれてたの」
「あぁ。
男同士の約束だからな。
だけどゲームの時間は
先生たちがしっかりと決めるからな」
勇生君が声をかけると、
真人はゴソゴソと包装紙を破って
嬉しそうに中から、
携帯ゲーム機を取り出した。
「それだけじゃ出来ないからな。
ほらっ、こっちはゲームソフトな。
かしてみ、ゲームソフトいれてやるから」
勇生君は手慣れた手つきで、
真人の携帯ゲームを手に取ると、電源を入れて
手に持っていたカードを見ながら、
何かの文字を入力していった。
ゲームソフトが入って、
ゲームが起動したのか、
スピーカーから音が鳴り始める。
「はいっ。
んじゃ、真人君はあっちな。
あっちで先生と遊んでよう」
そう言って、勇生君は美雪さんと一緒に
真人を隣のベッドへと連れて行く。
それと同時に
恭也君の手が伸びてくる。
反射的に振り払おうとした動作を抑えて、
なされるがままに許したのは、
恭也君のその手が、
医者として向き合っているのが感じ取れたから。
それでも触れられて伝わる体温に
私自身は緊張してる。
一連の流れのように、
朝と同じように様子を見ると、
ほっとしたように溜息をついた。
「きょ……多久馬先生、真人は?」
恭也君っと名前で呼びそうになって
真人が起きてるのを思い出して
慌てて名字で読んだ途端、
彼は悲しそうな表情へとかわる。
「検査の結果がわかり次第、
また伝えます。
もうすぐ仕事終わるんで、
真人君の闘病中に暮らして貰う家に案内します」
そう言うと、恭也君は一礼して
病室から出て行った。
私から突き放して拒絶したのに
そんな恭也君の行動に
ズキンと痛む心。
締め付けられるような、
そんな痛みを感じながら
恭也君が出て行った
ドアをただ見つめていた。
「神楽ちゃんいい?」
声がする方に視線を向けると、
何時の間にか真人の傍から離れた
勇生君が私の隣に座る。
「真人は?」
「大丈夫だよ。
美雪が寝かせたから。
ゲーム少しして眠らせたよ。
やりたいことは、少しはさせてやってからじゃないと
子供は言うこと聞かないからな。
検査も頑張ったご褒美だしな。
ずっと眠りっぱなしだったんだ。
体力も低下する。
疲れるのは無理ないよ」
真人の傍に行こうとする私を遮るように
勇生君は言葉を続ける。