【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】








お父さんとお母さんが
世界中を駆け巡っている
その先々に、何度か一緒について行った。


何処かわからないけど、
まだ危なっかしい歩き方しか出来ない私は
ここで待っていなさいって
言われてる部屋を抜け出して
何時も音が溢れる場所に駆け出していた。



そこには、かっこいいお洋服を着て
ピアノの鍵盤に指を走らせるお父さんと、
ふわふわの長いドレスを着て
同じくキラキラと輝くような
華やかなピアノを奏でるお母さん。



真剣な眼差しで
美しい音色を溢れさせるそんな二人が
かっこよくて、
何時までも見つめ続けてた。










忘れてた……。






子供は
親の背中をしっかり見てた……。






お父さんもお母さんも、
厳しかったけど、
私はそれでも二人をずっと見続けてた。


そして……憧れた……。








随分、忘れてたんだ……。








「ママ……」






近くで真人の声が聞こえた気がして
ゆっくりと目を覚ます。



すると真人の手が、
ペタペタと私の頬に触れた。



「真人……」



思わず、
手を伸ばして抱きしめる。


抱きしめ返す
真人の体をもう一度包み込むように
ギュっと力を込めた。




真人を抱きしめながら、
ゆっくりとベットから体を起こす。




「あれっ?
 真人?どうして……」


「ぼくね、けんさから帰ってきたら
 ママがお休みしてたの。

 ママを起こそうとしたら、
 お医者様がね、ぼくに言ったの。

 ママはつかれてるから
 今はねかせてあげようねって。

 それでね、ずっとここに居たの。

 ぼくがここに居たら、
 ママがよろこぶよって、言ってくれたから」




そう言って、自分の身に起きたことを
説明してくれる。


そんな我が子を
ギュっと抱きしめる。



真人の小さな手は、
トントンと、
優しく私を慰めるように叩いた。




「失礼します」



外から声が聞こえて、
姿を見せるのは恭也くん。


「ママ、お医者様こわいの?」



純粋に心配してくれる
真人を抱きしめながら
震えるのは私の体。



私がずっと隠し続けていることを
恭也君が真人に
話さないとは限らないから。


その後ろから姿を見せる、
勇生君と美雪さん。


勇生君と美雪さんの手には、
紙袋が一つずつ握られていた。

< 226 / 317 >

この作品をシェア

pagetop