【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】
「こっちも先に飲んでおいて」
離れている間に無理していたのが
伝わってくる体調。
そんな彼女の状態も、
俺に罪悪感を容赦なく突きつける。
「大丈夫よ。
元気だもの」
そう言って声をかけながら
彼女は渋々薬を受け取って服用した。
「言わなかった?
神楽さんの状態も、
俺か勇生の監視下にあるって?」
そう言う俺に
神楽さんは今も何かを言いたげな素振りで
見つめ続ける。
「自覚なさすぎだよ。
昔から神楽さん、そうだったけど
だけど……神楽さんに無理させたの
俺だってことは知ってるから。
眩暈もあったんじゃない?」
「でも眩暈なんて
誰だってあるものじゃない?
動けるんだから、働けるんだから
私は出来る事をするわよ。
母は強いんだから」
母は強いんだから。
わざと強調したように言うのは、
俺に負担をかけないようにしたいと望む
彼女の優しさ。
「眩暈だって危険なんだよ。
過労だって、ストレスだって
どれも油断できない。
重要な病気のサインになることだってある。
たまたま神楽さんが倒れたのが、
勇生の前で、
貧血を起こしたってことだけだよ」
はっきり言わないと
何も伝わらない。