【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】




やり直したいと
ずっと思い描いていた時間は
無残にも、崩れ去っていく。




彼女の条件は、
あまりにも俺には残酷で……



俺の条件もまた
彼女にとっては残酷で。







こんな形でしか、
再び、通じることが出来ない
離れていた間の歪。




それでもいい。





俺の手が届くところに
君が居てくれるなら……。





君がもう一度、振り向いてくれるまで
俺は君の傍で何度も
変わらない想いを伝え続ける。


どれだけ自分勝手だと思われようとも
目を反らすことが出来ない真実だから。


 

車を走らせて、
静まり返った家へと入る。



日付がとっくに変わった部屋に
昭乃の姿も勝矢の姿もない。



すでにそれぞれの部屋で
眠っているのだろうと
ネクタイを緩めながら
真っ直ぐに自分の部屋へと向かう。


そのまま鞄の中から取り出した
パソコンを立ち上げて
患者のカルテを確認する。


一通りのデーターを確認した後、
着替えを済ませると、
そのままベッドに沈み込んだ。


布団に潜り込んだ後も気にかかるのは、
今日検査したばかりの、
真人君の検査データー。



思いつく病巣へのアプローチ方法を
シュミレーションしながら
眠れないまま朝を迎えた。

< 237 / 317 >

この作品をシェア

pagetop