【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】


「俺が行くよ。

 勇生……出来る限り、
 当初はカテでステントとコイルで
 受けれると思った。

 だけどこの場所は、そうはいかない。

 オフポンプのままで、こことここをバイパス。
 弁の置き換え。
 
 行けると思うか?」


「誰に言ってんだよ。
 最後の砦が、弱音見せるなって。

 お前と神楽ちゃんの宝物、
 死神から奪いとってやるよ。

 さて、3本目行ってくる」



そう言うと、マグカップにいれた
少なめにいれたコーヒーを飲み干して
勇生は部屋を出て行った。



俺もノーパソを抱えたまま、
神楽さんがいるはずの病室に出向く。





病室では、冬生が今日も
真人君の勉強を見てくれていた。



「あっ、先生だー」


病室のベットから飛び出してきそうになるのを、
神楽さんが怒って、
しゅんとしたようにベッドにもう一度戻る。



「冬生君、少し真人君お願い出来るかな?

 真人君、先生……ママとお話あるから、
 少し部屋を出るな」


そう言った途端に
神楽さんの表情がかげる。


「真人は大丈夫だよな。
 お兄ちゃんと、今勉強中だろ。

 次、ここの問題な。
 
 この問題終わったら、
 おやつ食べてゲームするぞ」



冬生君がそう言って真人の気をそらしてくれる間に、
俺は神楽さんを連れて、
カンファ室の空き部屋へと入った。



「検査結果出たよ。
 とりあえず真人君の検査データー。

 この映像を見てくれたらわかるけど、
 この場所で弁の逆流が見られる。

 後は、この場所。

 血管に瘤が出来てるんだけど、
 向こうから貰ってるデーターより大きくなってる。

 次に、この場所。

 血管壁が弱ってるんだ。
 瘤が出来ていた時に負担がかかっていたから。
 この場所も補強する。

 最後はここ。

 殆ど塞がってるから、上手く流れていない。

 この場所は、バイパスって言って真人君自身の血管を使って
 体に出来る限り負担がかからないように通り道を作る」



説明する時間も、
神楽さんの顔色は張りつめたまま
血の気を失っていく。


「真人は……治るの?」



震えながら告げる言葉に
俺は自分の不安を全て隠しながら
黙って頷く。
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