【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



そのまま病室を後にする。


真人の手術までは、
あっという間に時間がすぎる。


手術を控えた前日。

俺は病室を訪れて、
神楽さんと真人君の二人の写真を
カメラへとおさめた。

プリントしてすぐに
フォトフレームに挟んで
デスクに置く。




この笑顔を
両方守りきるために。





データーを見つめながら、
そのオペの全ての行程を
実際の手順通り、
シュミレーションしていく。


そんな時間を過ごしながら迎えた夜、
テーブルに二つ出したグラスに、
今日は飲む予定のないブランデーを注ぐ。




相手の居ないグラスに、
自分のグラスを軽く打ち付けて、
そのまま明日に備えて、
もう一度、最初からの行程を復習しなおす。



翌朝、勇生と一緒に
真人君の病室に顔を出す。




「だいじょうぶだよ。

 ちゃんとぼく、
 ここにもどってくるから……。

 大好きな先生もついてるんだよ」

「そうね。
 
 真人を愛してくれてる
 先生がついているものね」

「うん。そうだよ。

 ぼく、先生とやくそくしたんだ。

 大きくなったら先生みたいな
 おいしゃさまになるの」

「そうなの?」

「うん。そうだよ。

 けんさの時、ぼく、先生におはなししたの。
 先生、すごくよろこんでくれたんだよ。

 がんばりなさいって、
 ぼくをだきしめてくれたの」


病室からオペ室に向かう
その時間、真人君と神楽さんが話している会話に
俺自身を再度、奮い立出せる。



「約束したように、元気になったら
 遊園地だ。

 先生たち、向こうに先にいってるから
 準備出来たら、
 浦和さんに連れて来てもらってな」




長い時間が始まる。



大切な存在を守るための
俺自身の闘い。




全ての支度を終えると、
コールと共に、
勇生とオペ室へと向かった。
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