【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】




「始まったんだ。

 父さんも朝から気合入ってたから
 心配しなくていいと思うよ。

 昨日の夜も、
 何度もシュミレーションしてたみたいで
 指先がずっと動いてた。

 やってくれるよ。

 それが俺がずっと見続けてる
 父親の背中だから」



そう言うと、
私の近くに座って
コンビニで買ってきたらしい
ペットボトルをテーブルに置いた。



「喉が渇いたら飲んで。

 待ってる時間も長いから」




そんな風に気遣ってくれる
冬君の優しさを感じながら
私はガラス越しに、
手術室のドアを見つめ続ける。


次々と時間が過ぎていく。



待ってる時間が長すぎて、
緊張しすぎた手足は冷たい。



それでも必死に、
真人も頑張っているんだからと
私自身を支え続けた。



ようやく開いた扉。


内側から姿を見せたのは、
勇生君。




隣から立ち上がった冬君は、
私が立ちあがるのを支えた後に、
冬君は勇生君の方へと歩いていく。


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