【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

15.秘事 -恭也-




昭乃が神楽さんを
傷つけようとした。

その現実は、
俺に刃を突き立てた。


警備に取り押さえられた昭乃を
警察沙汰にしないように、
穏便に祐天寺のものと連絡を取って
ハイヤーに乗せた後、
そのまま病院での後処理が残っていると告げて
多久馬医院の跡地に建てたマンションへと
自らは向かう。



まだ神楽さんがへ帰って来た形跡はなかった。


玄関ロビーのドアを開けて
エレベーターで
神楽さんの生活する部屋へ。


部屋の前に来ても、
やはり彼女が帰ってきてる形跡はなかった。


そのまま携帯を取り出して、
勇生へと電話を繋げる。


「勇生、悪い
 神楽さん、まだ居る?」

「いや、マンションに帰ったはずだけど。
 時間的にそろそろ着くころだと思うけど」

「そっか。
 真人を頼む」

「あぁ、こっちは任せとけ。
 それより今日はあの人どうしてるんだ?」

「あの人って、昭乃は祐天寺家で暫く預かって貰う。
 
 今の祐天寺は、
 俺の味方になってくれる奴もいるからな。
 
 勝矢と昭乃のことは、真人か退院するまで
 向こうに面倒見て貰えることになった。

 さすがに、妹が一歩間違えれば殺人を犯していたかも知れない現実は
 向こうにとってもショックだったみたいだ。
 
 まぁ、その辺は俺自身もだけどな……」


そう……。

昭乃がそこまで思いつめていたのなんて、
俺にはそこまで知る由もなくて。

この事件が、偽りの家族と
真剣に向き合うことが出来なかった
俺自身の過ちの末路なのだと知らされる。


「俺も……
 決着つけないといけないのかもな」

「まぁ、物は言い様だけどな」

「明日、雄矢の家に
 頼みごとに行ってくるよ」

「頼み事?
 まっ、俺も顔出すよ。
 たまには、三人顔突き合わせて
 話すのも悪くないだろ。

 腐れ縁だしな。
 んじゃ」

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