【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



「ゆびきり」




真人が小指を出して、
恭也君と、指切りをしながら歌を歌う。





過ぎていく時間は、
留まる事を知らない。



やがて話し終わった恭也君は、
勇生君の愛車のエンジンをかけて、
私たちを最寄り駅まで送り届けた。




ターミナルに車を停車させる恭也君。



ホームまで送ろうとしてくれていた
彼の好意を私は、首を振って断った。




これ以上は、
別れが辛くなりすぎるから。




トランクの荷物を恭也君がおろして、
私に握らせてくれる。



私の隣には、
真人の小さな手。




「真人君、元気でな。
 ママを大切にしろよ」



恭也君は、
最後に真人の髪を撫でながら告げた。



その後の言葉は必要ない。



ただ何も言わずに、
真っ直ぐに見つめてくれる彼の姿。


彼の目が、
私のことを思ってくれていることが
痛いほどに伝わるから。





「有難う」




別れの言葉は、
感謝の言葉。




「先生、バイバイ」



真人のその言葉を最後に、
私たちは駅の方へと歩き出した。









有難う。




そして……
ごめんなさい。




真人にも、恭也にも
どれだけ謝っても、
謝りたりないけれど
それでもこんな愛し方しか
出来ないの。






改札口でチケットを購入して、
真人と二人、ホームへと移動する。





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