【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】







「ねぇ、ママ。

 ぼくのパパは
 ぼくとママより、お仕事が大切なの?

 そんなパパ、僕いらないよ。

 先生がパパだったらいいのに……」





紡ぎだされた言葉に、
切り返す上手い言葉が
見つけ出せなくて。





「パパはお仕事が忙しい人だけど、
 パパも、真人やママに逢えなくて
 凄く辛いと思うのよ」




そう……ママが、
動き出した彼の時間を
再び、止めてしまったから。






その後は、
何も言わずに真人は黙って
私の隣、恭也君と勇生君から貰った
ゲームを取り出して、
静かに遊び始めた。






あの日からわかってた……。




何時かはもう一度、
離れ離れになる日が来ることを。




だからこそ、
私はもう一度、
彼の温もりを糧に
宝物を守りながら
強く歩き出さないと……。




今日からまた……
それぞれの道を、
歩き出すのだから。




1日だけの家族旅行から始まる
僅かな、この家族の絆だけを
大切に育てながら。






歩いて行こう。
真人……。



すぐ近くに居なくても、
貴方は、こんなにも
恭也君に深く愛されているのだから。
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