【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



えっ?

どうして……。




「ねぇ、恭也。

 もしかしなくても、神楽さんじゃない?
 あそこにいるの?」




耳打ちするように、
小声で話しかけてくる勇生。




マズイ。



合コンに参加してるなんて、
ばれたくない……。



ヤバいだろ?



俺は必死に、
神楽さんに
アプローチしてるのに……。






……決まった……。

ばれる前に、帰ろう。

今ならまだ……
間に合う。



この輪の中から抜け出したら……。





悪い、克己。


俺は……お前の為に、
自分の恋を犠牲にするなんて
出来ねェよ。





ゆっくりとテーブルから
立ち上がった時、
誠の声が店内に響いた。





タジタジになって声がどもってる私に、
今度は別の方から声がかかる。




「君、神楽ちゃん?
 文香の友達の?」




えっ?


誠、勘弁してくれよ。
そこで声、かけるのか?

普通……。






そう思った瞬間、
彼女はゆっくりと頷いた。




……マジかよ……。




「はいっ。
 
 神楽さんで良かったわよね。
 早くこっち来て」



そうやって、神楽さんの手を引っ張って
輪の中に引きこむのは、麗子さん。



「ねぇ、時間も来たみたいだし
 自己紹介始めない?」


夜会巻の女が告げる。


「まだ……一人、来てないね」




そんな会話が始まった頃、
カランカランっと
『チェリー』のドアが開く。





一斉に集まる視線。




そして彼女は、神楽さんの友達で
いつもエレクトーンを奏でる文香さんは
まっすぐに輪の方へと向かってくる。



「ごめんなさい。
 遅刻しちゃって」





なんだよ……。


5分の遅刻。

時間にルーズなヤツって
最低だ……。


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