【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】



電話の中で伝えたものは、
俺の方だけの医薬品ではそこを尽きるだろうから、
医薬品の第2陣を、
雄矢の方で手配して欲しいと言うこと。


現地の建物がいくつも倒壊しているらしいから、
恋華ちゃん経由で、
伊舎堂の人脈を駆使して欲しいこと。


一足先に、俺は現地入りする旨を伝えると
雄矢はそのまま、俺の意志を了承してくれた。


そのまま神島の元にも連絡をして、
現地に俺が入れるようにと
現場の消防や警察にも連絡を入れて貰う。



ようやく辿りついた病院。


事務室に飛び込んで、
保管庫の中から、救援物資になるものを
一気に台車に載せて、
屋上へと上がる。





「病院長、行ってらっしゃいませ。
 後の手配は、お任せください」

「悪いが、特別室と、一般病室のベッドを幾つか
 確保しておいてくれ。
 
 場合によっては、患者の搬送をこちらまで行う」


ヘリへと物資を詰め込んで、
そのまま俺自身も、
ヘリへと乗り込む。 



外からヘリの扉から絞められる間際、
屋上のドアを開けて、
姿を見せたのは冬生。




冬生と視線を合わせた途端に、
扉は閉められて、
ヘリはゆっくりと浮上していった。




駆け行く想いだけは、
誰にも遮ることは出来ない。






ヘリの上空から
眺める被災地の姿は無残だった。



黒煙があがる火災現場を見つめながら、
ヘリは徐々に着陸態勢に入っていく。






「院長、真人君を搬送した際の
 ランデブーポイントとして使ったことのある
 小学校のグラウンドへの着陸が許可されました」



ヘッドホン越しに聞こえる声に、
思わず握り拳に力がこもる。



消防の誘導によって、
ヘリが無事に着陸すると、
外から素早くドアが開かれる。
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