【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】





ヤケ酒が進んじゃった一つの原因は、
祐天寺って子が、
恭也君にアプローチしてる姿が
視界に入ったから。




私とは……比べるまでもない、
綺麗な人。




そんな人が……
恭也君の隣に寄り添ってる。




そんな光景を見ていたくなくて、
忘れたくて……ヤケ酒した。




意識を飛ばしてしまえば、
気にせずに済むと思ったから。







なのに……どうして?




その彼が、今ここに居るの?






「神楽さん?」







今度は私の名前を呼みながら
恭也君がゆっくりと覗き込んだ。





「あっ……。

だっ、大丈夫……」






そう言いながら、
恭也君から逃げるように歩こうとした途端に、
グラつく体。




グラついた体は、
またもや、恭也君に支えられる形で
すっぽりと腕の中におさまった。





「ねぇ、神楽さん。

 これの何処が大丈夫なの?」




恭也君のトーンが、
心配のトーンから少し低くなって、
怒ってる感じの印象になる。





うっ……。





恭也君の言葉に関しては、
何一つ返せる言葉が見つからない。




大丈夫って言ったのは、
嘘だもの。







こうやって……
貴方に傍にいて欲しかったんだもの。




貴方が他の人と一緒にいるのを見て
面白くなかったんだもの。



胸が……心が……
チクっと痛かったんだもの。








そのまま……すっぽりとはまった腕の中。


お酒の力もあって、
涙が止まらなくなる……。







そんな不安定な精神状態の私を、
恭也君は背中をさすりながら
落ち着くのを待ってくれてた。






一通り泣いて、
ようやく涙の洪水がおさまった頃、
私は自分の意思で、恭也君の腕の中から
ゆっくりと体を起こす。




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