【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】







恭也君に逢いたくて……。






壊れてしまいそうな心を
必死に彼の温もりでを思い出しながら
抱きしめて……。






「おはよう……」





ベッドの中、
少し掠れた彼の声が降り注ぐ。




乱れたシーツを体に巻きつけるように
引き上げる私。



今も昨日の余韻が残る体。





何処までも優しく微笑む彼。






「ウチ……
 来てくれるだろう?」



そうやって問いかけられたその言葉に、
静かに頷いた。








「神楽さん。
 悪いが恭也を起こしてきてくれないか?」



誘われて一つ屋根の下。


突然の同居生活。


彼の両親は、
深く追求しようとせずに
私をこの家に受け入れてくれた。



朝、誰よりも早く起きて
朝食の準備をするのが一日の始まり。


その後、顔を出すのは
恭也君のお父さん。


お母さんの介護をしながら、
一緒にリビングに出て来て
椅子に座る二人。



家族が揃っても
一向に起きてこないのは
一人息子の彼だけ。



洗い物をする手をとめて、
エプロンで手を拭きながら
かけていくのは、
二階にある彼の部屋。




ノックをしても返事のないドアを
一気に開けると、
暗い部屋に入り込んで、
手探りで蛍光灯のスイッチをひっぱる。




机の上に散乱するのは、
読みかけるの分厚い医学書。


書きかけのノート。





「おはよう。

 恭也君、朝だよ。
 皆、下で待ってるけど……」




もぞもぞと動く恭也君の腕が
巻きつくように伸びて来て、
私をベッドへと近づける。


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