【B】明日は来るから 【優しい歌 外伝】

6.暗闇に寄り添いたい -神楽-




5月。

GWが終わって数日したその朝、
突然かかって来た、一本の電話。


それは恭也のお母様からの
緊急コール。



恭也のお父様、恭也と一緒に
持たせて貰ってるこのコールがなったことに
危機感を感じる



緊急コールを受けて、
私は祖母から譲り受けた自分の自宅を飛び出して
タクシーに飛び乗った。



今は金額とか気にしてる場合じゃない。


タクシーの中から、119にコールをして
緊急信号を受けたことと、
コールを発信してきたその人が、
前に倒れた時の後遺症で、
言語障害が残っていることを伝えた。



「お客さん、後少しなんだけどそこ、
 曲がって公園を突き抜けた階段を降りたら
 多久馬医院ですよ」


渋滞にはまってしまったタクシーの運転手が教えてくれた道を
私は、必死に走って
通いなれた多久馬医院に向かった。



多久馬医院の周辺には、
心配そうに、ご近所さんが救急車を見つめながらひそひそしてる。



「どうかしたんですか?」



近所の人に声をかけると、
多久馬医院の患者さんらしいその人は
声に出す。



「多久馬先生が倒れたんだよ。

 担架で運ばれて、
 救急車にはいるんだけど、
 車がなかなか出なくてね」


その言葉に居たたまれなくなって
私は救急車の後ろのドアをトントンと叩く。



「119をコールした結城です」


そう名乗ると後ろのドアが開いて、
なかから救急隊員が顔を出す。



「どうしたんですか?」

「受け入れ先が見つからなくて」


申し訳なさそうに呟く救急隊員。


おじさんの傍には、
不自由な体で寄り添うおばさん。



「神前悧羅学院の医大へ。
 息子さんが心臓外科に居ますから。

 心臓外科・多久馬恭也の父親だと告げてください」


荒業かも知れないけど、
こうしたら確実だろうと、恭也君の名前を出す。



近隣の病院に行けばいいけど、
雄矢君の病院よりは、神前の方がまだ近いと思う。


この多久馬医院の周辺は、
ホント大きな総合病院がないんだから。



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