砂のオベリスク~第七大陸紀行~
エン
月明かりの似合う少女の名は、エンといった。
口数は少ないが、話すことを嫌っているわけでは無いようだった。
けれど初対面の者たちが頼る話題の大半を、彼女はかたくなに拒んだ。
生まれた土地を離れたのがずいぶん前であることは分かったが、そこがどこなのか、いつ離れたのかなどは教えてもらえずじまいだ。
いろいろな場所を一人で旅してまわり、次に目指すところがミュシャだという。
彼女はどこか先読みに長けていて、私の言葉が頭の中にあるうちに、その言葉に答えることがあった。
「残念だけど、私はミュシャへの案内者じゃ無いの。あなたと同じ立場よ。
あなたよりもずっと前から情報を集めていただけ」