砂のオベリスク~第七大陸紀行~
霊晶の砂漠
私はエンの空けた穴をくぐり、四つん這いで列車の屋根にしがみついた。
押し流す風、足を噛む恐怖。とうとうと音が走り過ぎる中、一歩踏み出せば、不吉な軋みがはっきりと聞こえる。
「月がてっぺんに来ているわ」
エンは月の寵愛を一身に受けていた。立っているだけで、名だたる詩人の口を奪うだろう。彼女が大人になった姿を思うと、恐ろしくすらあった。
「ここから飛び降りるのか。本当に骨折は覚悟しなくちゃな」
屋根の端から下を覗けば、地面まではかなり遠く感じる。
「なるべく地平線を見ながら飛ぶと良いわ」
「しかし……」
一瞬のことだった。
エンの姿が忽然と消えた。長い髪の先すら見せなかった。
そして私も、何かに襟首を掴まれて、青白い陰影を浮かべる砂の海へ引きずりこまれてしまった。