砂のオベリスク~第七大陸紀行~
■奇想都市ミュシャの陽炎
エポの町
「蜃気楼の都?」
「違うよ坊や。私たちは、そうは言わない」
砂漠の入口にある鉄道の町、エポ。
鉄と活気の灼熱にむせ返る小さな町は、東からの訪問者を手酷く歓迎した。
西に行けばもっと暑くなる。
そう声をかけてきたのは地元の女性だった。
強いクセのある髪を後ろで束ね、地面にひろげた黒い布の上で装飾品を売っていた。
一本の錆びた鉄柱に取り付けられ、もはやどこを指しているか分からない標識群。その下で私は、貝殻の耳飾りを鳴らす女性と、ごく短い会話をした。
……質素な首飾りに払った星貨三枚が、今回の旅の扉を開く鍵となった。