砂のオベリスク~第七大陸紀行~
カゲロウ〜輝ける死〜
駆け付けた先にいたのは、鳥でもなく、乗り物でもなかった。
「これは、ひどいな」
昆虫だった。
太陽の光に含まれる色のうち、綺麗なもの全てを映し出したような透明な羽根の下に、トンボに似た身体を隠していた。
奇跡的で流麗な模様の浮かぶ複眼を持つ虫は、きっと他にいないだろう。
「大きな虫、かしら」
「ああ。たぶんカゲロウだ。
こんなに大きくて、まぶしいのは見たことがない。本当によく飛べていたな。身体は鎧みたいだし、もしかして、俺が背中の上で寝そべっても大丈夫なんじゃないか。
いったい、どんな生活を送ったらこうなるんだ……」
カゲロウは動かなかった。
六本の鋭い足を地面に突き刺したまま、呼吸もしない。
美しいのに、虚ろだった。
辺りには珊瑚の破片が、彩るように散らばっていた。
「残念ね、何も分からない。死の匂いが全部を消してる」