砂のオベリスク~第七大陸紀行~
(そういえば飯はどうしよう。まさか、誰かがここまで運んで来てくれるわけでもあるまいし)
ずいぶん長いこと、私はカメラの手入れをして過ごした。そうしなければ、埃と古い木の匂いで気分が滅入ってしまう。
黒く重たいカメラは私の大切な相棒だ。ものごころついたころから、この一眼レフのカメラと共にいる。造り手は不明。少なくとも、高級なものではない。
だが、不思議なカメラだ。
十数年間、レンズやフィルムを一度も変えたことがないというのに、それでも充分過ぎるくらい機能する。
もしかしたら、空気を吹き掛けて埃を払ってやったり、優しく拭いてやったりする必要も無いのかもしれない。
それは、私が後ろ向きな気分にとらわれたときにやる儀式のようなものだった。
(埃で腹が膨れるのだけは勘弁だな。いったいここは、どれだけ掃除されてないのやら)
つまらない考えばかりが浮かび出したころ、急に車内の明かりが弱くなった。
電球の寿命が近いらしい。黄色い光がゆっくりと収縮を繰り返す。
「おいっ、おい……ちくしょう、嘘だろう。頼むからせめて、今日くらいは持ちこたえてくれよ」
私の願いもむなしく光の収縮は止まらず、そしてとうとう、すうっと闇に溶けてしまった。