砂のオベリスク~第七大陸紀行~
「低いわ。もっと近づかないとダメね」
「それより、舵をどうにかしないとまずいんじゃないか。このままだと、いつひっくり返ってもおかしくない」
制御を失ったはずの船は、転覆することなく流れに乗っていた。
私は、それが偶然による偶然の産物で、非常に危うい均衡の上に成り立っているのだと信じていた。
だから、全身を硬直させて、ぞんざいに銃を揺らすエンに胃をすくませていた。
「ず、ずいぶん物騒なものを持ち歩いていたんだな。かなり手がこんだつくりに見えるけど、家から持ち出してきたのかい?」
「そんなところ。大層な名前もあるのよ。『足の無い大天使』ですって」
危険な道具に対する憧れや恐れを見せず、やはりエンは淡々としていた。