砂のオベリスク~第七大陸紀行~





 行き止まりに突き当たると、エンはさっさと座り込んだ。同じように動かなくなった液体を焚火がわりにして、しばらくの休憩だ。



洞穴には川が流れているようだった。けれど、飲めたものか分からいので、結局はエンを頼ることになった。



 携帯食のあとにガムをすすめると、思いのほかエンは喜んだ。栄養だけの粉の塊より、やはり口に甘いものの方が好きなようだ。

そのくせ、足の長い虫が這う洞穴を裸足で歩くことに、何の嫌悪感も見せなかった。





「しかし、まさかこんなところで、変わった焚火を囲むなんて思わなかったよ」

「シェードよ。命の影だと教わったわ。幽霊とか、魂とか、そういう領域のもの。
何度か会ったことがあるけれど、みんな、私の鼻があまり利かなかったわ」

「シェード。はじめて聞くな。
良くないものなのかい?」

「それ自体は、とくに何とも無いわ。でも、こちらからちょっかいを出すと厄介ね」





 どうなるのかと私が尋ねれば、エンは手頃な石をシェードに投げ付けてみせた。




石はシェードの体を擦り抜けて、私の前に落ちると共に、砂でも泥でもないものになって崩れた。

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