砂のオベリスク~第七大陸紀行~
この洞穴は海食洞だったのだ。
満潮の波が岩壁を少しずつ削り、気の遠くなるような時間をかけて作り上げたものだっ。
まさにこのときも、波は洞穴を拡げようとしていた。
「ちくしょう、もしかしてここは完全に沈没するのか」
「たぶん、そうなるでしょうね。ねえ、あなたは水に浮くことができるかしら」
「ああ、特別に浮くというわけでもないけれど。出口も分からずにうろつくのも危険か。なにか打つ手は無いものかな」
「とにかく、案内者を信じてみるわ。まだ動かないから、もしかしたら……」
むせ返るような潮の香りが立ち込める。全身を痺れさせる怒号を上げて、波が押し寄せた。