砂のオベリスク~第七大陸紀行~
ミュシャへようこそ
「あら、あなた。どうしたの、泣きだしそうな声を上げて」
振り返ると、すぐそばにエンがいた。通行人に身体を擦り抜けられても、ごく自然に立っていた。
これまで人を避けていた風の彼女だ。
この状況こそが自然だったのかもしれない。
目まぐるしく変わる状況の中で大した変化を見せないというのは、頼もしく思えた。
「エン、良かった、いたのか。妙なところに来てしまったな。みんな幽霊みたいだ」
「妙なところ……って、ここがミュシャじゃない」