はだかの王子さま
 
 そう言って、お父さんは、軽く手を振ると、二階の自分の部屋に上がって行く。

 わたしは、その背中を見ながら、ため息をついた。



 ……いろんなことが起こり過ぎて、もうワケわかんないよ。

 お父さんは、星羅に。

 賢介は、お父さんに、変わるらしい。

 ついでに、着替えもしてくるって言うお父さん達を見送って。

 少しでも落ち着くために、お茶を飲もうと、冷蔵庫を開ければ。

 いつものペットボトル入りのヤツがきれてた。

 普段は、すぐコンビニに行っちゃうんだけど、今は、外出ちゃマズいよね?

 しかたなく、お父さんしか触らない、キッチンの食器棚を開ければ。

 わたしの目の前を『現実』が歩いて横切ってゆく。

 ……!

 わたしは、悲鳴を飲み込んで『それ』を見ながら、なるべく冷静な声を出した。

「さ……砂糖壷さん。
 足と尻尾が出てますが……?」

『うっきききゅ!』

 わたしに、声をかけられて、びっくりしたらしい。

 砂糖壷が、変わる。


 ぽんっ


 なんて、軽い音がしたとたん。

 今までウェッジ・ウッズって言う、海外ブランドの陶器だと思ってたウチの砂糖壺が。

 一瞬。

 砂糖の詰まった百円ショップのガラスの小箱と、白い子ネズミみたいなゴブリンの二つに分かれたのが見えた。
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