はだかの王子さま
「星羅!!!」


 声を限りに叫んだ先に、星羅はいた。

 彼を捕まえた巨大な手には、腕の部分はなく、手のひらと、それに繋がった指が、空に浮き上がってる。

 星羅は地上から、たっぷり三階分ぐらいは、高く持ち上げられていた。 

 しかも、影の手から逃げ出せないみたい。

 長い金髪を乱して、もがく星羅を、玄関に開いた穴から出て来た美有希が、笑った。

「王子さま。
 あなたの力では、シャドゥ・ハンドに抗(あらが)えませんわ。
 だって『彼』でさえ、捕まえてしまったんですのよ?
 ……ごらんなさい」

 美有希の指差す方向に、まさか、と視線を移した先には。

『0(ゼロ)』がいた。

 ふさふさ尻尾の、真っ白な仔犬ちゃんが、大きな手に顔だけ出して、埋もれるようにして、もうひとつの手に、捕まってる!

「ちょっと、0さん!
 あなたは何でも切れる、最強、最悪な覇王の剣なんでしょ!
 どうして、そんな風に、捕まっているのよ……っ!」

 叫んだわたしに、0が、ぐるるる、と唸る。

 どうやら、声が出せないでいるらしい。そんな0に代わって、知らないヒトが応えた。

「……それは、ね。
 私の手に、切るべき実体がないからですよ。
 地上に吹く風を圧縮して作った『手』です。
 どんなに鋭い刃でも『空気』を切ることは出来ません」
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