はだかの王子さま
 

 どんっ!


 バインダーの刃が空気の盾にぶつかって、たわんだ音を立てた瞬間。

 ひゅっ! と音がして、三波目の筆記用具型の刃が飛んで来た。

 今度は賢介のお母さん、偽救急隊員の相手をしていて、気がつかない!?

「……っ!」

 ここからは、なんだか時の流れがゆっくりになったようだった。

 一瞬遅れて飛んで来た刃物に気がついた賢介のお母さんは、片手を盾から放し、わたしの方に向かって手をのばす。



 かしゅかしゅっ!



 そんな軽い音がして、筆記用具の刃物が、半分ほど真っ二つになったけれども!

 まだ、残った何本かが、わたしに向かって飛んで来る……!

 よけられない!

 とっさに思って、目を閉じた、瞬間だった。

 ぐいん……っと、急上昇する強い力が、わたしを空中に押し上げた。


 えっ………!


 何!?

 何が起きたのよ!

 突き刺さるはずの痛みも、何も無く。

 ただ、細い棒に乗せられて、昇る感じはジェットコースターだった。

 まるで滑るように昇る、足の裏がわきわきするような浮遊感に耐え切れなくてわたし、悲鳴をあげた。

 きゃ~~っ!

 きゃ~~っ!

 目を開く、なんて思いつかず、手探りで棒を握りしめ、落ち着いてようやく。

 恐る恐る、目を開いて見えた景色は、もう電線を越えていた。

 そして、わたしが握りしめ乗っかっている棒は、デッキブラシで、柄の先に砂糖壷が下がってたんだ。

「デッキブラシ君!?」

『ぴぎゃ!』

「砂糖壷さん!」

『うきゅゅっ!』
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