はだかの王子さま
 短い時間で、急に体力を失ってゆくゴブリンが心配だった。

 目の前を通り過ぎようとした中世ヨーロッパ風の白薔薇宮殿の塔。

 その小窓にかかった柵をぐぃ、と掴み。

 ヒト一人が膝を抱えて座れるぐらいの出っ張りに足をかけて、デッキブラシから降りると、今度はわたしの方が彼を抱きしめた。

『お父さんの居場所、すぐそこなんでしょ?
 だから、少し休もう?』

『ぎゅぎゅぎゅ~~』

 本当は、よっぽど疲れていたのかもしれない。

 デッキブラシのゴブリンは、ため息をつくようにつぶやくと、ほうっと、全部の力を抜いた。

 その触った感じを確かめて、ぎょっとする。

 デッキブラシのゴブリン!

 まったく生きている感じじゃない!

 飛んでる時は、何となく暖かい感じがしたのに!

 空に浮くことをやめたとたん。

 ほのかに暖かかった熱が急速に消えてゆく。

 そして、気がついた頃には、だだの冷たく固い木の棒と同じ感触になっていた。

『デッキブラシ君?』

 ……まさか!?

 死んじゃうんじゃないでしょうね!?

 そんなの、イヤ……!

 思い描いた最悪なことが現実に起こりそうで、涙がうるっと出て来た。

 その時だった。

 デッキブラシから、なんだか大きな音がする。


 ぐごごご~~


『こ、これ、何の音……!?』

 思いの他大きな音にぎょっとなれば、デッキブラシの先から、砂糖壷がポロッと落ちるように離れて言った。

『ネてるっきゅ!』

 ネてる……?

 眠ってる!?

 
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