はだかの王子さま
 北塔と、地下が従業員用のスペースなのも知ってたし。

 地下の迷宮みたいな複雑な廊下の果てにある、星羅の部屋と彼の仕事場のデザイン工房には実際にしょっちゅう行ってたけれど。

 北塔の方には、上がってみたことは無く。

 ましてや、こんな上の方から、白薔薇宮殿の全体を見下ろすことなんて、なかった。

 わたしがいる場所は、せまい。

 少し触れば、一応、バルコニーになっているらしい、柵つきの小窓が少し開いたけれども。

 窓の大きさは、一般の家基準に直したら、屋根裏部屋の明かりとりぐらいしか、ないんだもん。

 窓を全部開いて部屋の中に入れるほど大きくはないし。

 そもそも中は、三階分はたっぷり使った吹き抜けの大広間で、入れたところで、足がかりがない。

 外から降りようとしても、ねぇ。

 足元には塔と塔の隙間しか見えないし。

 フェアリーランドに来ているお客さんも、働いている従業員の姿も見えないトコロを見ると……うーん。

 思わず空を見上げれば、遠くに警察や報道関係らしいヘリコプターが旋回しているけど、こっちまで来られないのは、さっき判った通りだった。

「……これは……デッキブラシ君が、回復するまで、動けないかな……?」

 柵の間にデッキブラシと砂糖壺を抱え、ギリギリ腰をおろして膝を抱えると、ぐぅ~~と鳴った。

 うぁ……これ、わたしのお腹が減る音だ……

 側にいるのが、眠るデッキブラシと砂糖壺だけだったからかな?

 デッキブラシ君のいびきと同じくらい大きく聞こえるお腹が減る音が『恥ずかしい』より哀しかった。

 そう言えば、わたし。

 昨日のお昼から、ちゃんとご飯を食べてないんだ……
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