はだかの王子さま
 そう考えただけで、ますますお腹が減ってきた。

 四月の終わり、ゴールデン・ウィークの午前中の気温は凍えるほどではなかったけれど。

 塔の天辺は、周りを取り囲む海からの風が強く吹いて、寒かった。

 ハンドの空気の壁に跳ね飛ばされて、身体が痛んでいたことを、今更思いだし……

 ついでに、変わってしまった美有希のことと。

 連れ去られてしまった星羅のコトを思い出して、心まで突き刺さるように痛んできた。

 わたし……美有希と星羅の話や。

 賢介のお母さんと、偽物の救急隊員のしゃべっている内容を隣で聞いちゃった。

 星羅は前の王様を、宮殿ごと燃やして『第一王位継承権』って言うヤツを自力で盗ったヒトだって……

 お父さんは、わたしのお母さんとは別なヒトと結婚してたんだって。

 他にも『覇王』だの『グラウェ』だの初めて聞く言葉が山積みだったけれど、ビッグ・ワールドなんて言われても判らずに。

 ただ、世界で一番信頼してて、大好きな星羅とお父さんが、本当は優しくも誠実でもないヒトたちらしいことを聞いて哀しかった。

 それでも。

 わたしには、狼のくせに楽しそうに笑う星羅と。優しげに目を細めるお父さんの顔しか、見えない。

 他の顔なんて、知らない。

「星羅……お父さん……」

 大事なヒトたちの名前を呼んで、涙が出て来た。

 大切な何かと一緒にココロが引き裂かれて、痛かった。

 壊れそうな心を抱いて、座って抱えた膝に額を押しつければ、控えめな声が聞こえた。

『王さまのヴェリネルラ、元気出しテ』


 ……砂糖壺さんだった。



 
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