はだかの王子さま
 お父さんの言葉は案外軽く、美有希が顔を上げた。

「父上は、わたくしの母上を嫌っていたのでは、なかったのですか!?
 なのに、なぜ!
 こんなに良くしていただけるんですか……!」

 わけが判らないと小声で叫ぶ美有希に、お父さんは、息をつく。

「ダリアのことは今でも悪いと思ってるし、そう嫌いではなかった。
 ……ただ」

 言ってお父さんは、ふっと遠い目をした。

「……ただ、ダリアに出会う前。
 先に、最も愛しいたった一人に出会ってしまっていたから」

 例え『家』の決定であっても他に、誰かを愛することができなかったとお父さんは、目を伏せる。

「……それが、真衣の母親……?」

「……ああ」

「その方がいらっしゃったから……わたくしの母には、一度も手を出さなかったと?」

「……」

 お父さんの沈黙は『肯定』で。

 美有希は、とうとう鼻を盛大に鳴らした。

「父上……!
 いえ、ファングさま!
 あなたは、莫迦ですか!?
 どれだけヒトの良い間抜けなんですか!?」

「星羅……いや、ゼギアスフェルから良くそう、言われるが?
 ローザ?」

 いきなり、自分をこき下ろし始めた美有希に、お父さんは、目をぱちぱちと目を瞬かせた。

「そう言うのは、普通、わたくしの母上に非があります!
 特に、あなたを手に入れる努力をせず!
 寂しいから、と手っ取り早く、言いなりになる誰かに慰めてもらおうなどと!」

「ダリアは、ダリアで、誰か心から愛する者がいたのだろう?」
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