はだかの王子さま

「いませんよ、そんな方!
『友人』は、山ほどおりましたが、恋人になりそうなほど長くお付き合いなさった殿方は、一人もいらっしゃいませんでしたし!
 わたくしの父は、ファングさまだと再三伺ってましたもの!
 居たとしても、顔が出せないほど身分の低い者か、あなたと面と向かって話し合いも出来ない、腰抜けですわ!』

 美有希は辺りに気づかって、大声は出さなかったものの。

 腰に手を当てて、鋭くささやいた。

『ビッグ・ワールドの習慣では、こちらの世界よりも『性』に対する意識が敏感で、禁忌もあります。
 それなのになぜ、母を不義密通の容疑で、処分せず、関係ないわたくしを『認知』してしまったのですか!?
 普通は、妻を寝取られた! と怒る所でしょうに!?」

「……俺の恋は、叶うべくもなかったからな。
 せめて、ダリアとその娘には、幸せになって欲しかった」

「……つまり、あなたは、真衣の、母親にも、手を出して、いないと?」

 美有希は、確認するように、一言ずつ区切って声を出し……頭痛をこらえるように、額に手を当てた。

「あなたってヒトは!
 身に覚えのない娘を二人も抱えて、どうするつもりだったんですか!?」

「……別に何も?
 お前たちの父親は、この俺だ。
 俺と真衣は父娘で、普通に穏やかに暮らしてたし。
 お前のことは、去年の内に、次代の当主に選ばれて、良かった、と素直に思っていた」

 言ってお父さんは、穏やかに笑う。

「今回は、ゼギアスフェルの全面協力があれば、扉を開くことだけは出来るだろう。
 しかし、門番の仕事は他にもある。
 扉を閉じるためには、血液がいる」

 ゼギアスフェルや俺の血なら少量で済むが、お前のを使うとなれば、命の保証が出来ない。

 そう言ってお父さんは吐息をついた。
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