はだかの王子さま
 その、お父さんの立てる靴音が消えて、大分経ち。

 ようやく上げた、美有希の顔は、案の定、涙でぐしぐしにぬれていて。

 彼女は、上流階級のお姫様、というよりは、いつも見慣れたクラスメイトみたいなしぐさで、涙をぐいぐいと拭いた。

「も、やだ……っ!
 本っっっ当にあたしばっかり、悪人みたいじゃないのよ!!
 小さいころから、本当に寂しかったんだからね?
 死んじゃおうかって思うほど、イヤな思いだって山ほどしたのに!
 だから日ごろの恨みを込めて、大切なお役目と立場、それにこっち側に連れて来た『本物の娘』ってヤツを丸ごとむしり取ってやろうと思ったのに!
 なのに、なによ!
 このありさまは!!」

 美有希は意味無く、大広間の中をツカツカと靴音高く歩き回った。

「なんであの莫迦は、あっさり当主も門番もあたしにくれちゃうの!?
 しかも『俺のもう一人のヴェリネルラ』ですって!?
 今更、ふざけんじゃないわよ!
 冗談じゃないわよ!!
 父上も……真衣も、もっとイヤなヤツだったら良かったのに!!」

 そこまで、イライラと叫んで美有希は、何かに気がついたようにはっとした顔になった。

「そうよ、真衣!!!
 やだ、あたし!
 真衣を突き飛ばしたまま、こっちに来ちゃったんだわ!」

 いらだち興奮して、赤らんでいた美有希の顔が、一気に青ざめた。

「やだっっ!
 これで、真衣に何かあったら……っ!
 父上に申し訳が立たないじゃないのよ!
 えっと、最後にシャドゥ家の奥、レディ・マリオネッタが駆けよっていたのは、見えたけど!
 父上のことだから、ゼギアスフェルさまの顔を見たとたん、全部察してシャドゥ・スパイダーを応援に行かせたとしても……
 こっち側の手勢は何人だっけ!?」
 
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