はだかの王子さま
 指折り数えていた、美有希の顔色が更に悪くなり、彼女は泣きそうな顔をして、叫んだ。

『ハンド! シャドゥ・ハンド!! 居ないのっっ!?』

『……控えております。姫』

 呼べばすぐに声が応えて、次にふっと、手品のように空気の間からハンドが現れる。

 黒髪、色の濃い黒サングラス、黒服の長身の男(ひと)だ。

 その片膝をついた胸倉を、つかみかかりそうな勢いで、美有希が詰め寄った。

『今すぐ真衣を探して連れて来なさい!!』

『ファングの娘の息が確実に止まったかどうかを、ご自分の目で、ご確認されたいのですか?』

『莫迦ね! 違うわよ!
 まだ無事なら!
 生きているのなら、助けてくるのよ!
 出自が判らないから汚い、とか言って風の手で捕まえて来るんじゃなく、その腕に抱いて、静かに大切に、迅速に飛んでくるのよっっ!?
 いい? 判った……!?』

 切羽詰まったその声に、無表情なはずのハンドが、眉間にしわをわずかに、寄せた。

『しかし、姫。
 最初のご指示が『命を奪え』でしたので、ゼギアスフェルさま拉致の際、かなり強烈に風ノ壁で吹き飛ばしてしまいました。
 そのあと、こちら側の手勢がとどめを刺しに走った以上、彼女の命は、もはやないものと……』

『……うるさいわねっっ!
 判ってるわよ! でも、もしかしたらっってことがあるじゃない!』

『シャドゥ家の人間が、フルメタル家当主の命令を遂行しそこなうことなどあり得ません。
 例え、敵が同じシャドゥ家の人間同士で、友であったとしても、親兄弟でさえ、当主のご命令であれば、文字通り、命を賭けて全力で戦い合います。
 そして、一度下された命令は、撤回できません』
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