はだかの王子さま
 一軒家ならともかく、やっぱり普通のマンションは無理かな?

 今まで、わたしが居る時は静かだったけれど、実は、普段はそうでもなかったみたいだし。

 誰も居ないはずのマンションの部屋で、ゴブリン君達が騒ぎだしたら、パニックだ。

 警察だって来るかもしれない。

 そのときの様子が、簡単に想像出来て、わたしは、ぶるるっとクビを振った。

『う~~んと。
 じゃあ、星羅に頼んで、この白薔薇宮殿の片隅に居候(いそうろう)させて貰うので』

 事情が、事情だもんね。

 お父さんの他に、ウチのゴブリン君たち込みでも、星羅は、地下迷宮にある空き部屋の一つぐらい、貸してくれるにちがいない。

 そう言ったら、王さまは、軽く笑った。

『何?
 そなた達は、一家揃って白薔薇宮殿の地下牢にでも住む気か?』

 地下牢!

『ま、まさか!』

 びっくりしたわたしに、王さまは、ニヤリと、唇の端を持ち上げた。

『そもそも、我に追放された、とはいえ。
 世界をつなぐ門番たるフルメタル家当主が、ゼギアスフェルと共にこのフェアリーランド内に住まず、外に住居を構えた理由を知らないのか?』

『……え?』

 イヤな予感にクビを傾げれば、王さまはふん、と鼻から息を吐いた。

『そなたの家に居るゴブリンは、ビッグワールドの基準では、最悪に醜い』

『そんなこと!
 わたしはゴブリン君達が『可愛い』と思ったし、星羅だって外見なんて、気にしないわ』

『ほほう、ナイトウマイは変わった趣味を持っているな。
 だが、フルメタル・ファングのゴブリン達がこっちの世界にいる理由は、それだけではない。
 アレらは、昔、ビッグワールドにその名を轟かせた、嫌われ者。
 盗賊団一味の子どもたちだからだ』

『……え?』

『盗賊行為で、ビッグワールドを荒らしまくったゴブリンどもの親は罪の重さゆえ、即刻死刑。
 続いて、その子どもたちも処分されることになったのだ』

『処分って!
 ゴブリン君たちの親は、ともかく!
 子どもたちは何も悪いことをしていなかったんでしょう?
 なのに、なんで!』

< 320 / 440 >

この作品をシェア

pagetop