はだかの王子さま
 前王の子どもが『亡くなった』のは現在から換算して十五年前のこと。

 年齢からしてみても、わたしが前王の娘に間違いないって星羅は言った。

 一方で、星羅がファングの娘である『真衣』の存在を知ったのは、こっちの世界に追放される直前で。

 ビッグワールドの、どの貴族、王族、神官の家系にも似てないわたしについて、一度だけ『どこの子?』とはファングに聞いたけれど。

『俺の子ども』の一点張りで、詳しく説明はしてくれなかったから。

 ファングには、実はこっちの世界に秘密の愛人がいたか。

 もしくは、全くの他人の子を施設から引き取ったのかと思ってたらしい。

 そして。

 真衣は、何か小さいときのこと、何か覚えてる?

 ……って星羅に聞かれたけれど。

 これがまた、さっっっっぱり覚えてなかった。

 小さいころ。

 わたしは『病弱』で。

 ずーっとベッドに寝ていた記憶がある。

 幼稚園にも、保育園にも行かず。

 お仕事に出かけてるお父さんと、幼馴染の賢介が遊びに来るのを、ずーーーっと待っていただけだ。

 そんなわたしの説明を聞いて、星羅は、頷いた。

 そして、これからは、完全に僕の推測だけど、って断った。

「……今、生きている真衣が、当時『病死』と公に発表されたあたり。
 君は、何かの理由で、身分の高い人間に殺されかけ、息の止まる寸前に。
 フルメタル・ファングとシャドゥ家に救われ。
 僕にも内緒で、隠されて育ったんじゃないかな……?
 そしてその五年後。
 何か、大変な……特別なことが起こって、フルメタル・ファングは、前王夫妻を殺害した」

 そうでもないと、政権の中枢近くに居たはずの、僕にさえも気がつかず。

 こんな風に、真衣が前王の娘が、育っている理由か見つからない……!

 そう締めくくられた星羅の話に、わたしは、息ができないほど驚いて。

 混乱したまま……っていうか。

 信じたくない真実を受け入れられないまま、星羅に聞いていた。

「……わたしが、生まれた時に命を狙い……殺そうとした、身分の高いヒトって……?
 ……それは、きっと。前王夫妻。
 つまり、わたしの本当のお父さんとお母さん?
 ……ってこと?」

「う……」

 星羅は、沈黙し。

 でも、それが答えになった。

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