夕焼け色に染まる頃


「中に入ったら話を聞いてやる。お前が嘘をつかねえ限り信じてやろう、だから誤魔化したり嘘をついたりしようとするな」


そして、ふっと短い息を吐いて笑った。


「んでよ、長旅で疲れた俺に面白い話を聞かせてくれや」


「……はい……っ」


涙を拭いながら、やっとの事で返事ができた私にとっては正直楽しい話なんかじゃない。

寧ろとても重要な話なんだけれども、ああやって高杉さんが言ってくれたからいくらか楽になった所もあるみたいだ。

ズズーッと鼻をすすって前を見据えればやっぱり仁王立ちの高杉さんの背中が見える訳で、クスリと笑った。
…と同時にクシュッと小さなくしゃみ。

さっきまでテンパっていたからだろうか、冷たい空気に触れてもなんともなかったけれども、今となっては寒い。

どうやらタイムスリップはしても季節は私が居た現代と同じ秋みたいだ。
冬ほど寒い訳ではない、しかし制服でこうも歩いていては体も冷えると言うもの。

涙を拭い終えた私はブルッと震えて両肩を抱き締めた。


「ったく、おせぇな……何してやがんだあいつらぁ……」


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