生き残れ!主従ゲーム
アテナはその場にあったロングソードを真っ直ぐ店主の首に当てる。振り切れば首が飛ぶような位置だ、武器を扱っているだけありすぐにそれを理解した店主は小さく声を上げて脂汗を流している。
コレーはその光景に驚いて顔を土気色にしながら口元に両手を当てて、アテナと店主を見比べていた。
まさか本当に殺すつもりなのだろうか、といった視線ではあるもののアテナ自身はもちろん脅しだけのつもりであって本当に殺すつもりなど毛頭ない。
「大人しく答えれば命は保証してやる、よく考えて答えろ」
「な、何だってんだ…!?」
「お前以外にこの店にいるのは誰だ」
「きゃ、客と俺の息子だ……」
「客? こんな時間に普通の客がいるわけないだろうが」
「ち、違う! 本当に……ひッ!?」
「女だと思って甘く見ると、本気で首が飛ぶぜ親父さん」
アテナが剣で店主の首を上に向けるようにギリギリと強く押さえ付けている。コレーはどうしよう、とハラハラした様子でその光景を見ていた。
もちろん、アテナがこういうことをするということはこちらをうかがっている人物がいるかもしれないということを前提にしているのだから、警戒を怠るわけにはいかない。
扉と奥を注意深く確認しながら、じりじりと壁側に寄る。コレーは予めアテナに壁に寄るように言われていたのだが、完全に目に入っていない奥の部屋から出てきた人間には反応することが出来なかった。
「きゃああぁっ」
「! コレー!」
「おっと女、動くんじゃねぇぞ? この子が可愛いなら言うことを聞け」
「くっ……」
アテナが慌てて振り返ると、謎の黒服の男によってコレーは首に腕を回され背後から捕らえられていた。
店主はその光景に更に顔を青くしている、彼はどうやら仲間の類ではないらしく幼い少女が乱暴な扱いを受けていることに心を痛めているようにさえ見える。
脅す方に身を入れ過ぎてコレーの方に注意を向けなかったことを後悔して焦っているアテナだが、それでも何とかコレーは取り返さねばと手元に収まったままのロングソードを謎の男に向けて構えていた。
いつでも斬りかかる体勢だが、相手がコレーの首に腕を回している以上は下手に刺激するのは逆効果となってしまう。