魔弾
「しーぐーれーっ
もう朝だよ?」

この状況なんてとっくの昔に慣れていた時雨は重たい目をゆっくりと開いて言った。

「ふぁーあ…
ルピは将来立派な詐欺師になれると思うよ…」


不思議そうに首をかしげる彼女。
「詐欺師…?
なんでなんで?」



「まだ月が空にあるのに朝って言い張れるなんて素晴らしい才能だよ、本当に。」


真紅の髪、サイドテールに、コウモリの髪飾り、口に咥えた棒付きキャンディ、桜町の例外…彼女の名はルピ。

桜町では珍しい魔法使いではない人間であり、体の一部を機械化している桜町では唯一の人間である。
だが脳も機械化しているにしては随分とお粗末な…


「ちょっと!
読者さんになんて事教えてるの!?
ルピはバカじゃないもんっ!」

頬を膨らませてそう言うと。

「あっ!
そうだ、こんなことしてる場合じゃないんだった!」

人の家に不法侵入してまで言いたかった内容を忘れるなんて信じられない。

だが言わずともルピがこんな時間にここに来た理由は大体分かる。

「祭りなら一人で行ってくれ。」


「…………。」

涙で潤んだ目で見つめてくる。
今にも泣き出しそうだ。
女の子っていうのは、本当に分からない。

「はぁ……
分かった分かった、連れて行ってやるよ」

その言葉を聞くと同時に涙はどこへやら満面の笑顔で俺に駆け寄る。

「時雨っ
いつものやってくれるよね、ね?」



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